「「草枕」変奏曲」(横田庄一郎)

 この本が発売されて平積みになっていたころ、書店で手にとってグールドが漱石の「草枕」を愛読していたこと知った。この本を買うことはなかったのだけれど、それがきっかけで「草枕」を読んだ。底の浅い、つまらぬ小説だと思いましたよ。小説として、というよりも藝術論として底が浅く感じた。中学生が書いたような。一方で、やたらとむつかしい漢語が使われていることも印象的で、何度も何度も辞書をひいた記憶がある。この本によれば、大岡昇平でもむつかしかったらしいので、わたくしごときの手に負える漢語ではなかったわけですね。
 さて、なぜかはしらん、このところグールドのバッハばかり聴いているものだから、グールドの名前で検索などをしたところ、松岡正剛さんの文章を見かけて、そこにこの本が言及されていたのである。そうしてようやく、わたくしも読んだ次第。グールドと漱石にはいろいろ共通するものがあったようである。グールドはアスペルガー症候群ではなかったか、という説をどこかで読んだが、するってえと漱石も? スパイや探偵のエピソードを読むと統合失調症のけはいもするのですが。ともあれ、グールドの音楽について、ではなくグールドという存在の哀しみみたいなものを描いた本と見受けました。
 「ゴールトベルク変奏曲」はデヴュー作のほうのCDしか持ってない。晩年の演奏をラジオで聴いたことはあるのだが、おそすぎてイライラした。でも、あれから時間がたち、わたくしも「草枕」を読んだ。そろそろアレを聴いてみようかと思う。