「数学的にありえない(上)」(アダム・ファウアー)
本の雑誌で三橋氏が絶讃する一方で大森氏が酷評した小説。大森氏の『ミステリ方面で絶賛されているのを見ると、SF読者との間には深い河があるのかも』ということばを読んで関心をもった。わたくしはコレを面白いと思うのか否か。つまり、わたくしはミステリ屋なのか、SF屋なのか?
さて、読んでみてどうだったか。このヒトは不確定性原理を理解してないようである。アイディアの根幹にキズがあっては困りますね。ただ、ラプラスの悪魔なのかと思っていたら“巻き戻し”というのが理解できなくなった。多世界解釈を採って、しかも分岐する世界を選択(?)できる能力なのでしょうか。登場人物がヴィジョンを見るところはおもしろいと思う。
おはなし自体はそれなりに読ませるし、人物がどいつもこいつもロクでなしで感情移入しがたいのは難であるがサスペンスもそこそこ。上巻を読むかぎりでは、わたくしはややミステリ派よりであるようです。