2007-01-01から1年間の記事一覧

「スターヴェルの悲劇」(F・W・クロフツ)

ふしぎなおもしろさに惹かれてもう一冊。クイクイ読ませるようなストーリーテリングがあるわけでもないのに、なぜだか読めてしまう。ある種のライトノヴェルといってもいいかもしれない。読者の心にフィードバックされるところが極度にすくないためか、とも…

「マギル卿最後の旅」(F・W・クロフツ)

ごくごくはじめのほうで犯人はわかってしまう。この小説の眼目がフーダニットではなくハウダニットにあるのはわかるけれど、それにしてもミスディレクションが下手ですな。どう考えてもあやしい行動をとっている人物をうたがわない探偵があほに見える。トリ…

ジャンプ、新連載「バレーボール使い郷田豪」(高橋一郎)は「マサルさん」をソフトにした感じでしょうか。第一回は十分におもしろかった。気になる「サムライうさぎ」の二回目は及第点というところ。

「翻訳語成立事情」(柳父章)

これも「英語で読む万葉集」も、「翻訳家の仕事」で言及されているの見て読むにいたった。あらたな本との出会いにみちびいたという点では「翻訳家の仕事」は評価できる。 「社会」「個人」「近代」「美」「恋愛」「存在」「自然」「権利」「自由」「彼、彼女…

チャンピオン、「ショー☆バン」(森高夕次、松嶋幸太朗)がなんの盛りあがりもなく終了。原作の作家はどうもこんな感じで、作品を大局的にみて話を構築できない。「おれキャプ」もこんなふうに朽果ててゆくのだろう。「OUTLAW TAXI. 赤い稲妻」(矢上裕)は…

「バッハ『ゴルトベルク変奏曲』 世界・音楽・メディア」(小沼純一)

*「「草枕」変奏曲」の横井氏は“ゴールドベルク”、小沼氏は“ゴルトベルク”と表記する。わたくしはなんとなく、“ゴールトベルク”としてしまうのですが。 まづ、擬似対話がうっとうしい。なにやらこれでポリフォニーだか対位法だかをあらわしているようなのだ…

「英語で読む万葉集」(リービ英雄)

わたくしには韻文を読む、あじわうセンスがない。なのに時おりこうして詩の本を読んではやっぱりダメかとがっくりすることをくりかえす。この本についても基本的にはそうなのだけれど、長歌は短歌よりおもしろいのだという発見があった。なんだかダラダラと…

ジャンプ、「重機人間ユンボル」(武井宏之)が終了。個性的といっても限度がある。暴走ぶりについてゆけぬ。そして、「サムライうさぎ」(福島鉄平)がはじまった。間断なくチャンバラものがあるなあ、編輯部にそういう意図があるのかしらん、などと思いつ…

「グノーシス」(筒井賢治)

オビに『日本人研究者による待望の入門書、登場!』と仰々しく大書してある。でもまあ、そんな感じであるのは事実で、メチエはなかなかかゆいところに手がとどく選書であるね。グノーシス思想一般ではなく、キリスト教グノーシスにかぎってあるのはちょっと…

「「草枕」変奏曲」(横田庄一郎)

この本が発売されて平積みになっていたころ、書店で手にとってグールドが漱石の「草枕」を愛読していたこと知った。この本を買うことはなかったのだけれど、それがきっかけで「草枕」を読んだ。底の浅い、つまらぬ小説だと思いましたよ。小説として、という…

チャンピオン、「涅槃姫みどろ」(大西祥平、中里宣)が終了。二話をかけたエンディングだが、なんてこともなく終わった。それがこのまんがらしいのかもしれぬ。週刊誌連載で一話読切をつづけ、一定のクオリティをたもったことに敬意を表する。

マガジン、「妖怪のお医者さん」(佐藤友生)が開始。読切とはずいぶん変わっている、気がする。導入部としては退屈。

「翻訳家の仕事」(岩波書店編集部)

「輸入学問の功罪」において、珍妙な訳文の卸元のひとつとされていた(明示されてはいないが)岩波の本が、『翻訳というものは、(略)とりあえず原文の意味内容が伝わればそれでよし、といするものではありません』などとはじまるのは皮肉である。こちらに…

「輸入学問の功罪―この翻訳わかりますか?」(鈴木直)

副題は蛇足。要するに翻訳哲学書の文章の読みづらさは原文の構造を保存したまま訳そうとするためであり、なぜ訳者は日本語としての完成度を犠牲にしてまで直訳調を維持しようとするのか、という話。キモの部分については同意できる部分もあれば、そうでない…

ジャンプ、「神力契約者M&Y」(暁月あきら)が終了。雰囲気はきらいではないが、おもしろかったとはいいがたい。

「がじぇっと(3)」(衛藤ヒロユキ)

「衛星ウサギテレビ」を読んで、こちらはどうなってるのが気になった。しらべてみれば3巻が出て完結しているとのことで、あわてて買ってまいりました。内容をわすれちゃったので前二巻も読みかえした次第。まづ残念な点をさきにいうと、クライマックスのあた…

「消されかけた男」(フリーマントル)

中盤以降は一気読みであったし、結末は思いもよらぬものであった。でも、おもしろかったという印象がないんだよなあ。それは主人公の選択が、わたくしには受け入れられないものだったからなんだろう。まあスパイの世界なんだし、あんなものなのかもしれず、…

サンデー、「武心BUSHIN」(万乗大智)が終了。街道場どうしの柔道対決がおわったら、ヨーロッパ小国でのテロリストとの死闘がはじまった。この超展開はなんなのだろう。前者のおわりのほう、柔道のルールをやぶって当身などもつかったバトルがくりひろげら…

「恐怖の谷」(コナン・ドイル)

石上三登志「名探偵たちのユートピア」を読みはじめると、最初の章でドイルをあつかっていた。これが「緋色の研究」の第二部は西部劇であるという、瞠目すべき説(といっても、第二部の内容なぞこれっぽっちも憶えてないけれど)だったりしておもしろい。さ…

「会長はメイド様!(1)」(藤原ヒロ)

うーん、これはさほどの作品ではない。話もありきたりだし、キャラクタもつまらぬ。とりわけ碓氷がどうしようもない。少年まんがのヒロインも、女性からみたらあんななのでしょうか。つまりこれはタイトルにいうところの、会長がメイドという点以外に新味の…

「オトメン(乙男)(1)」(菅野文)

4冊目は白泉社。というか、まんが読みすぎですな。コメディとして、もっと可笑しくなりうる素材に思えるし、ヒロインの魅力の無さも気になる。とはいえ、今日読んだ4冊のなかでは一番おもしろかった。

「capeta(13)」(曽田正人)

しかし講談社のまんがばかりですね。べつに選ってるわけではないのですが。このまんがはレースのクライマックスがおもしろいのであって、それまで退屈。「はじめの一歩」のようにライヴァルとの対決をまたのばすのかと思えばそうではなくて安心したけど。

「のだめ カンタービレ(17)」(二ノ宮知子)

バッハはいいが中だるみ気味か。もっとのだめに演奏させろというのに。

「おれはキャプテン(13)」(コージィ城倉)

体育会系の精神論を、知性で打破する展開を期待していたのにこんなでは説得力がない。なんとなく勝っただけではないか。

「谷崎潤一郎随筆集」(篠田一士編)

谷崎がいっている内容よりも、谷崎の文章そのものが読みたいのにかなづかいを変えてしまっては話にならぬ。などと愚痴をいうなら岩波文庫なぞを読まなければいいのですがね。「いわゆる痴呆の芸術について」での義太夫の不合理を事細かにねちねちとケチをつ…

チャンピオン、「赤い稲妻」(矢上裕)なる新連載。なにを眼目としているのかわからぬ。凡庸な展開に凡庸な主人公。

「おんみつ蜜姫」(米村圭伍)

すばらしくおもしろい、というようなモノではないのだけれど、おっとりとした雰囲気がよろしい。山手樹一郎の読者ならわかるはず。こうしたファースを書きつづける作家がいることはなんとも貴重である。わたくしは宗春さんが好きなので、吉宗対尾張という図…

「ドレフュス事件」(大佛次郎)

ナポレオン三世を支持し、普仏戦争を熱狂的に推進したフランス国民は、ドレフュス事件でもブーランジェ将軍の問題でも一貫して愚劣であった。これはもちろん、衆愚政治の問題でもあろうが、そもそもフランス人がおかしいように思われてならない。なんだって…

マガジン、「じょっぱれ瞬!」(佐々木善章、若松浩)が終了。もっとふつうにマグロ漁から話にはいったほうがよかったような。なんか最近こういうまんがが多いなあ。出来はダメダメとまではいわない、という程度。

「へうげもの(1)」(山田芳裕)

織部が主人公の長篇まんが、などというものが存在することにおどろく。以前、スーフィズムをテーマに12世紀アラビアを舞台にしたミステリを読んだが、ディープでしかもエンタテインメントという作品とその製作者には畏敬の念を感じますねえ。でも、すごくお…