「恐怖の谷」(コナン・ドイル)

 石上三登志「名探偵たちのユートピア」を読みはじめると、最初の章でドイルをあつかっていた。これが「緋色の研究」の第二部は西部劇であるという、瞠目すべき説(といっても、第二部の内容なぞこれっぽっちも憶えてないけれど)だったりしておもしろい。さらに「恐怖の谷」につづいていくわけですが、ネタバレ警報がでている。そこで思い出した。ホームズ譚はとっくのむかしに読破しているつもりだったが、「恐怖の谷」は第二部で挫折していたのである。というわけで、まづはこちらを読むことにした。
 新潮文庫の延原訳、昭和56年の50刷。わたくしが買った小説の最初の30冊、おそらくは20冊にはいるであろう。そもそものはじめから積ん読体質であったと思えばうんざりもする。が、今からでも最初にget backできると考えておこう。
 第一部はわりとふつうのミステリ。カーも評価しているのだそうな。わたくしが憶えていたのは最初の暗号のところだけでしたがね。そして第二部はまるでちがう小説になっていた。これは若き日のわたくしが挫折したのもしょうがない。本格ミステリにギャングもの(石上氏の見解は書かないでおく)を継いだようなへんてこりんで、ドイルはどういう順番でこれを発想したのか。相当なヴァイオレンスでおどろくが、ドイルはやはり短篇作家であったというのが結論です。
 ところで「名探偵たちのユートピア」ですが、第二章では「トレント最後の事件」と「百万長者の死」のネタバレ警報が出てるのですね。前者は既読だからいいとして、後者ははじめて聞いたタイトル。これ手にはいるんだろうか? 検索すると復刊ドットコムで3票しか入ってないよ。