ストーリーメーカー 創作のための物語論

 私が物語の自動生成に關心をもつたきつかけは、奇しくも著者とおなじく「ドラマティカ」の存在を知つたことであつた。「ショウビズTODAY」といふテレビ番組で紹介されてゐたのである。
 もつとも私は小説やまんぐわを書きたいと思つてはゐなかつた。ではなぜ關心をもつたかといふと、コンピュータがつくりだすへんてこな物語を讀みたかつたのである。それ以前にをかしな詩をつくるソフトウェアの存在を知つてゐたから、「ドラマティカ」を知るなりこれは人間が考へつきもしないヘンなストーリーをつくる機械であると直感したのである。
 そんなふうに考へる私とこの著作の意圖が大きくくひちがふのは當然であるが、結果として細部と申しますか枝葉末節が氣になることとなつた。以下に列擧する。
 「スターウォーズ」にしばしば言及するがエピソード4から6に限られること。1から3だつて獨立した作品なのだから、主人公ルークの敵の過去を描くサブイヴェントあつかひにはできまい。
 「指輪物語」の主人公をヒルボとしてゐる。ビルボですらないのもひどいが、「指輪物語」を讀んでフロドとビルボをまちがへるものだらうか。
 いはゆる「ゲド戦記」の作者をグウィンと書く。
 感應とすべきを「完納」、同質を「同室」とあるのは單純な變換ミスだらうが、著者が「屈託」の語をどう理解してゐるのかわからぬ。編輯者がチェックをいれないのも不審である。