ウロボロス偽書(下)
 この本を讀んで、本格ミステリをたのしむための條件を知つた。それは讀んでゐる當の小説が本格ミステリであると信頼することである。作者による忠告などを讀むまでもなく、この小説の數々の謎がきれいに、あるいは本格ミステリ的に解決されるとはハナから思はれず、したがつて眞相はどうかと考へることもなかつた。
 本格としてたのしめなかつただけで、ヘンな小説とはおもしろく讀みましたけども。清水寺の死にはおどろいた。そこまでやるのかと。