篠房六郎「百舌谷さん逆上する(1)」

 單なるコメディかと思へば意外にヘヴィである。イヤをかしいところは單純に、あるひは複雑にをかしいのですが。
 むかし「エヴァンゲリオン」がはやつてゐたころ、アレをなんと申しますか文學的體驗のやうにとらへるむきがあつて違和を感じたものだつたが、疎外感をめぐる物語としては「エヴァンゲリオン」よりこちらのはうが思考がふかいし、より文學的といへなくもないのではないかしらん。
 それは考へすぎであるとしても、痛々しくてすなほにたのしむことはできないのはたしかだ。かういふのをフツーにたのしんでしまへるひとは、つまりフィクションはフィクションとわりきれるのか、はたまた疎外をあまり感じないのか。

百舌谷さん逆上する 1 (アフタヌーンKC)

百舌谷さん逆上する 1 (アフタヌーンKC)