諸星大二郎「西遊妖猿伝 大唐篇(1)」

 ずつとむかしこのマンガを途中まで讀んで挫折したことがある。さがせば双葉社版のコミックスが何册かみつかるはずだ。
 どうしてつづかなかつたのか。思ふに、私が期待するほどファンタスティックな部分がなく、悟空が無力で、ディケンズの主人公のやうにながされるままになつてゐるからだらうか。
 あらためて讀んでみると、これはおもしろいぢやないか。この卷ならばなんといつても竜児女の姐さんがカッコいい。諸星さんは威勢のいい姐さんを描くのがうまい。パッと思ひつくところでは眼光娘々とか碁娘とか。
 天コウ地サツの百八人がしるされた岩なんて「水滸伝」的ガジェットもでてくるが、天コウのをはりのはうに毛澤東が出てくるとなると中國の歴史もさきが長くないのでせうかね。

西遊妖猿伝 大唐篇(1) (KCデラックス モーニング)

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