「ウースター家の掟」(P・G・ウッドハウス)

 ああ、おもしろかった、の一言。ボルヘスの「バベルの図書館」のごとき叢書を、私が編むとしたらウッドハウスをもって一巻をあてることを正式に決定しました。ストーリーは複雑をきわめ、バーティの二重三重の苦難にはジーヴスすら解決の方途を見出せないほどである。まあ、苦難といっても、元はといえば叔母さんの家のご馳走にありつけないかもしれないという危機に端を発しているのですが。
 アステアの「踊る騎士」の脚本をウッドハウスが書いていたというのは解説を読んでの発見であった。ヒロインが踊れないジョーン・フォンテーンであるにもかかわらず、この映画は大好きなのである。グレイシー・アレンが最高。
 オビの“疾風怒濤の面白さ”というのはどうにも無粋であるが、それにつづく“極北的理不尽美少女”というのはちといいかも。