半席
 ホワイダニットものの連作短篇のやうである。明かされる動機は意外ではあるが、納得できるかといへばさうでもない。ヒントの出しかたがヘタであるためだらうが、そもそもこの小説をそこまで本格ミステリとして讀むのが妥當なのか。さらにいふとカッとして殺してしまつたがその理由は、てな展開ばかりで事件のヴァラエティがたりない。
 これは雜誌に掲載されたものなのだらうか。解説にそのあたりの情報がなくなんとも不親切であるが、さう思ふのは設定の説明として毎度毎度おなじやうな文章を讀まされるため。雜誌に載るときはそれでよいとしても、一册の本にまとめる際には過剩な重複はさけるべきではないか。
 江戸の社會や幕府の制度の問題が山ほど出てくる。いったん成立したシステムは實情に即さなくなつてもいつまでも殘りつづけるのか。もうすこし何とかならんかつたのかねえ。

 

半席 (新潮文庫)

半席 (新潮文庫)