風魔(下)

 一方に家康を配置するのがいけない。天下とりをめざす家康に對し、つまらぬ敵をあいてに斬つたはつたをくりかへすだけの主人公がスケールの小さい、つまらぬ人物に見えてしまふ。
 主人公は無辜の民を殺さないのだといふけれど、主人公がとらへては殺さず逃がしてしまふ敵がそれから殺戮をくりかへすわけで、間接的に主人公が殺してるやうなものぢやないか。
 といふわけで到底すきとはいへない小説だが、讀ませるのはたしかである。おもしろいけど好きぢやない作品といふところか。

風魔〈下〉

風魔〈下〉