神様のメモ帳

 これだけネットが發達した現在、安樂椅子探偵はこれまでになく強力になりうると以前から思つてゐた。でもこの小説で探偵はさほどの活躍をしてをらぬ。それは活躍できるやうな事件ではないからだらう。もつと本格志向の作家にやつてもらはねば。
 「たったひとつの冴えたやりかた」はSFマガジンに掲載されたときに讀んだ。この小説を讀みをはつたときにハンカチが必要にならないならあなたは人間ではない、なんてアオリもあつたが私はちつとも泣けず、むしろヒューゴー賞をあらそつたゼラズニイの短篇を讀みたいなどとかんがへたものだ。いまとなればそのゼラズニイティプトリー浅倉久志もこの世にはゐない。私は長生きをしすぎたのだらうか。

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)