武田雅哉「蒼頡たちの宴」

 漢字の本、かと思つたら、脱漢字を夢見た男たちについての本でありました。
 蒼頡といふのは漢字を發明したとされる傳説の人物あるいは神。近代化にともなひ出現した、漢字を改良せんとこころみたひとたちを蒼頡にたとへてゐるわけですね。うたかたの夢でをはればまだよかつたが、簡體字といふかたちで實現してしまふのだからたちがわるうございます。
 ともあれ私がいちばんおもしろいと思つたのは、西洋人が中國語をバベル以前の言語ではないかとかんがへたといふ話である。漢字は文字が意味をあらはすので、地方地方でどのやうに發音されやうと字面で意味は通じる。これこそアダムの言語である、てな感じですな。

蒼頡たちの宴―漢字の神話とユートピア

蒼頡たちの宴―漢字の神話とユートピア