古味直志「ダブルアーツ」
少年ジャンプ41號で終了。
原因不明の死病が蔓延する世界。主人公にはふしぎなちからがあり、彼と手をつないでゐると病気が進行しないのである。ヒロインは罹患してしまひ、主人公とずつと手をつないでなければならなくなる。
風呂にどう入るか、なんてエピソードもあるにはあつたが、おほむね元氣にバトルしてをりました。
それで私はヒッチコックの「三十九夜」を思ひだしてしまつたのだ。主人公とヒロインは手錠でつながれたまま、荒野(だつたか?)をさまよふ。やうやく宿(だつたか?)にたどりつき、そこでヒロインがストッキングを脱ぐのですね。しかし手錠でつながつたままなので、主人公の手がヒロインの脚にそつてうごいてゆく。ここがなんともエロティックでドキドキしてしまつたのだ。
それだけなら私がアホといふだけのこと。しかしゴダールが「映画史」のなかでヒッチコックの名に言及する際、かずあるヒッチコック映畫のなかのまさに「三十九夜」のそのシーンを引用してゐたのだ。これをどう解釋するか。
ゴダールが私におとらぬアホなのか、はたまた私が感じたドキドキは映畫史的に意義深いものだつたのか。
もし後者だとするならば、かうしたシーンをゑがかなかつたために「ダブルアーツ」はマンガ史にその名をきざみそこなつたといへるかもしれない。