「輸入学問の功罪―この翻訳わかりますか?」(鈴木直)

 副題は蛇足。要するに翻訳哲学書の文章の読みづらさは原文の構造を保存したまま訳そうとするためであり、なぜ訳者は日本語としての完成度を犠牲にしてまで直訳調を維持しようとするのか、という話。キモの部分については同意できる部分もあれば、そうでないところもある。が、やりだまにあげられている文章がアホな文章であることには完全に同意いたします。
 気になる点ふたつ。引用文の漢字を書きかえたりしたら、それは引用ではないのではないか。そのうえ、“思ふ”とか“だらう”といったのは残して“ゐ”だけ“い”にかえるとはメチャクチャである。また、最終章の筮竹のたとえはわけがわからない。易のことを理解してないか、すくなくともわたくしの理解するところとはまったく異なる。べつに易について知らなくたっていいけど、知りもしないことをたとえに使わなくても。