「随筆 本が崩れる」(草森紳一)

 エッセイだの随筆だのにはなるべく近寄らないようにしたいものの、本が崩れるてえのは私も他人事ではない。蔵だ書庫だなどと呼んでいるが、要は物置にすぎないシロモノに本をしまっているのだけれど、地震のあるたびに崩れてはいまいかと心配する。おそろしくて覗きにゆく気にもなれず、実際に確認するのは何日も何週間もたった後である。幸い、今までいちども崩壊の憂き目にはあっていない。
 草森さんのほうは寝床のまわりに本の山があるのだから凄惨である。地震がおきると頭のうえに本が降ってくる。それを野球じこみの強靭なるリストでふりはらうそうなのだが、大地震がきたらどうなるのであろう。野球やタバコについての文章もあるが、そちらには関心がない。