「ハイヒールの死」(クリスチアナ・ブランド)
一日に二冊読了したからといって、ものすごいスピードで読んでいるわけではなく、つねに2〜5冊ほどが読みかけになっており、たまたま残りすくない二冊をかたづけただけなのであります。
さて、山口雅也さん認定の本格ミステリの殿堂入り作家は、ポー、チェスタトン、クイーン、カー、そしてブランドなのだそうで、それを知ってからずいぶんとこの作家を気にしていたのですが、きちんと読むにはいたらなかった。というのも、「はなれわざ」が楽しめなかったのですね。トリック云々でなく、あそこに描かれている人間関係にうんざりしてしまってだめだった。だからブランドのベストは「ふしぎなマチルダばあや」であると(二冊しか読んでないのに)ずっと思っていたのです。
ようやく読む気になったコレはどうだったか。刑事が無能なのも、登場人物がどいつもこいつも不愉快なうそつきなのもいけませんな。事件の舞台となった店の構造を図示しないのでどうにもわかりにくいのも減点対象。事件が起きたとき、読者は被害者がまちがって殺されたのではないかとすぐさま思うでしょうに、それを指摘する登場人物がなかなか出てこないのには苛苛させられましたしね。ま、動機の面、人物関係の複雑さは見るべきところかもしれないけど。
ともあれ、「マチルダばあや」の王座はいまだ安泰というところです。そういえば「マチルダばあや」の続篇があるんだったか。どこかで訳出してもらえないものかな。