「アラビアン・ナイト(7)」

 東洋文庫の前嶋訳であります。メモによると六巻を読んだのが2003年1月であり、一巻にいたっては1994年6月であるらしい。気が長いというか、のろまというか。
 カマル・ウッ・ザマーンの物語。当初はボーイ・ミーツ・ガール譚だったのに、後半ドロドロの愛慾ドラマになってしまうのにびっくり。こういうのがあるからアラビアン・ナイトの長尺の物語は油断ならん。訳者のあとがきによると、これを難ずる評論家もいるそうです。小説ならそうでもありましょうが、これはお話。突拍子もない展開に驚歎するのが醍醐味であろうと思います。
 アラーッ・ディーン・アブーッ・シャーマートの物語。ヒロイン(の一人)がヤースミーン(ジャスミン)といい、またジャアファルという大臣(悪役ではない)が出てくる。ディズニーのアニメも変なところで平仄をあわせてきますな。ストーリーはまったく違いますけども。まず、三重離婚とか臨時中間結婚人などという不思議きわまる制度がおもしろい。が、それよりもおもしろいのがベッドシーンの描写であります。
 『両手を相手の脇腹にあてがい、甘露の管を狭間の門にあてて、ひとおししますと、格子造りの門に至りました。それから勝利の門を通り抜けたあと、月曜日の市場にはいり、火曜日の市場、水曜日の市場、木曜日の市場と進んでいきましたが……』
 すばらしいの一言ですな。さらにストーリーが進行すると、こちらも驚愕すべき展開が待っています。でも魔法のランプが出てこなかったってことは、これは有名なアラディンの物語とは別物ですかね?