「真世の王(下) 白竜の書」(妹尾ゆふ子)

 面白かった。でもやっぱりダメだ。世界の謎をめぐる話はいいが、生身の人間のドラマが裏打ちされてないといけないと思うのですよ。それを担うのがウルバンのはずなのに、彼はけっきょく運命に翻弄されるだけ。
 たぶん作者にとってはそんなドラマはどうでもよいのだろう。形而上学的アイディアを根幹にしたストーリーを描きたかっただけで。私はそうした物語ではない物語をSFを呼ぶが、SFとしては世界や真の言葉といったアイディアがいかにも弱い。だからSFチックな冒険物語にしたほうがいいと思うのですがねえ。