蒼山サグ「ロウきゅーぶ!」

 作者プロフィールによればインド料理がどうのかうのとあるから、「サグ」てな例の暗殺教團からきてるのかしらん。
 「飛べないアヒル」みたいな感じ。「がんばれベアーズ」……はちがつたか。「リベロ革命」にもママさんバレーの監督をするエピソードがあつたなあ。あ、プレイステーションに「プリズムコート」といふタイトルがありましてな、なんてことはいいとして、要するにコーチがへつぽこティームをつよくする話です。
 試合と練習の部分がみじかすぎる。語り手の主人公がでしやばりすぎなのだ。語り口も、バスケがなければアイデンティティが崩潰するやうな高校一年生らしくないし。
 それにかんがへてみると、私は一人稱の小説があまり好きでないのかもしれない。「悪霊」も「カラマーゾフ」も「白痴」もすきなのに「罪と罰」や「未成年」はきらひだし(「罪と罰」は三人稱だつたつけ?)、チャンドラーを好まないし、倒叙ものが苦手だし。
 いや待てよ、「吾輩は猫である」は大好きだし、「夏への扉」はまあ、それほどでもないがきらひではないし、ウッドハウスのジーヴスものだつて愛讀してるし、それはないか。まあとにかく、主人公は語り手でなくプレイヤーでなければならぬ。ホームズ譚の主人公がワトスンでないのと同樣である。
 あと「松角」といふ地名を「まつづみ」と讀ませてゐるが、「すみ」がにごつたのだから「まつずみ」だらう。こまかいけど。

ロウきゅーぶ! (電撃文庫)

ロウきゅーぶ! (電撃文庫)