田中美知太郎「ソフィスト」
まづ、「まえがき」の「固有名詞の呼び方をできるだけ世上の慣用に近づけたのと、ギリシア原語の使用を最小限度に止めたのを除いては、べつに通俗的ということを考えなかったが、著者はいかなる場合にも、普通の思考力をもつ人ならだれでも従うことのできる文章を書きたいと心がけているので、その点では、この書物も特別に難解なところはないであろう」といふことばに感銘をうけた。
讀むまへは、ソフィストを再評價して惡名をくつがへすのであらうと思つたが、さう單純でもなく、「このあまりにも通俗的な道徳家ソクラテスに対しては、われわれもニイチェとともにこれを唾棄しなければならないであろう。そしてその反動としてソピステースが英雄化されなければならなくなる。しかしながら、そのいずれも事実ではなかったのである」とある。
ごもつとも。私がいささかニーチェに毒されすぎのやうだ。
なんだかプラトンが讀みたくなつた。でも、あるいは「プロタゴラス」や「ゴルギアス」よかこつちのがおもしろいかもしれませんよ。
- 作者: 田中美知太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1976/10
- メディア: 文庫
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