「翻訳語成立事情」(柳父章)

 これも「英語で読む万葉集」も、「翻訳家の仕事」で言及されているの見て読むにいたった。あらたな本との出会いにみちびいたという点では「翻訳家の仕事」は評価できる。
 「社会」「個人」「近代」「美」「恋愛」「存在」「自然」「権利」「自由」「彼、彼女」という10のことばの成立事情。論理の展開が強引かつ一方的なきらいがあり、そこまでいわなくても説明が不足している場合があり、首をかしげたり、反撥を感じたりする部分が多い。それでも「自然」以下などはかなりおもしろい。「彼、彼女」については単に文法の差異の問題にすぎないようにも思われる。横文字をカタカナのまま横行させるのをきらい、漢語にむりにかえようとする向きもあるが、漢語にするのもよしあしだと思いましたよ。