「美男狩(上)」(野村胡堂)

 財宝のありかをしめす3つのアイテムの奪い合い、とくればおもしろそうだが、それがどうも。話の進行がスムーズにいかず、イライラする。奪い合いとなれば思うようにいかないのは当然なのだけれど、あらゆる登場人物のやることなすことが妨害にあい、ストレスばかりで爽快感がない。
 基本的に平易な文章なのだけれど知らない言葉が少なからず登場する。「かいくれ見当が」つかない、「乳虎」、「打見たところ四十左右」、「便々と」、「半間な」、「今日はまんが悪い」、ほかにも漢字が見つからない漢語がちらほらと。だいたい意味は推察がつくものの、困ったものです。訳書にせよ、小説やノンフィクションにせよ、現代の著作家の文章しか読んでないと語彙が貧困になるんだなあ。