「西洋哲学史 古代から中世へ」(熊野純彦)

 通史にはよわい。つい読んでしまう。そこをまた新書屋がねらってきて、やたらと通史っぽいのを出すのである。うかうかと乗せられて困ったものだが、これはアタリ。とてもおもしろい。哲学者やその思想の紹介がただの紹介文でおわっていないのである。もっとも、中世の神学にはなんというか切実さを感じないし、ボエティウスの思想にいたっては読んでもよくわからなかった。
 秋にはつづく近・現代篇がでるそうだが、古代と中世でヴォリュームの半分をしめてしまう歴史というのはなかなか無いのではなかろうか。科学史、美術史、音楽史などはそんなふうではなさそうで、やはり思想史というのはヘンである。が、アウグスティヌスデカルトの方法的懐疑がすでにそっくり現れているのを読んでしまえば、思想なんてのは古代においてすでに出揃っていたとしか思えない。あとはみな焼きなおしなのでしょう。