「謎の解剖学者ヴェサリウス」(坂井建雄)

 部屋の入り口のわきにつんである本の山にあった。例によってこの本がうちにあることも、この世に存在することも知らなかったわけですが、毎日とおる通路にそんなものがあるというのも不思議なことであります。
 さてヴェサリウスの時代、学者はガレノスを妄信し、じっさいに人体を解剖することがあっても、それはガレノスといかに一致しているかを確認するためでしかなかったそうな。ヴェサリウスは自分で解剖して見たもののほうを重視し、ひいてはそれが医学の進歩の土台となったというような話。
 でも私が気になったのはむしろヴェサリウスの解剖にかける情熱(?)ですね。解剖すべき屍体がたりなくて絞首台からこっそり刑死した死骸をぬすんだり、解剖に適した時間まで処刑を待ってもらうように懇願したとか、なんだかすごいことしてます。筋肉人や骨骼人が郊外に立っている奇妙な光景は荒俣宏さんの本かなにかで見た記憶があるような無いような。