「魔の沼」(天沢退二郎)

 一作目からそうなのだが、どうも妙な感覚なのであります。超自然にふれた主人公がちっとも疑問に思わないし、突然いなくなった父親が何をしていたのかも気にしていない様子。全体に説明がないのですね。説明を廃して意図的に不可解な雰囲気をかもしている風でもない。その違和感が気になってしかたがないです。
 そもそも物語を物語として構築しようとしていないようにも思えます。(多分に絵画的な)不可思議なイメージを数珠つなぎにしているだけで、物語になっていなくてもお構いなしという具合と申しましょうか。つまらないわけでもないけれど、消化不良は残ります。