「イリアス(上)」(ホメロス)
W・ペーターゼンの映画とは関係ないのだが、なぜ読むことにしたのか忘れてしまった。
ふしぎなのは、十年にわたる戦争の十年目だけをあつかっていることである。テティスとペレウスの婚礼も、パリスの審判もないから、これだけでは話がわかりにくいではないですか。ま、ホメロス当時のひとには当たり前のことだったのだろうけど。
もうひとつ不思議なのは、あきらかにヘクトルが主人公なことであります。アキレウスが莫迦なのは承知していたが、アガメムノンも似たり寄ったりの阿呆である。これではトロイ方に肩入れしたくなるというもの。
それにしてもギリシアの神々ってのは俗事にえらく容喙するのですね。ペガーナの神々というよりは「封神演義」の仙人たちのよう。戦っている一方のがわに力を貸したり、場合によっては当事者の意志をも操作してしまう。こんな世界では人間の努力なんて無駄だって気にならないものか。