「光車よ、まわれ!」(天沢退二郎)

 ずいぶん長らく捜していた一冊がこのたびめでたく復刊。図書館にもないし、ちくま文庫にはいったのも見つからなかった。さがしている間に妄想をたくましくしておりましたよ。水車や風車のように、光車は光をうけてまわるのかな、と。「まわれ!」と命令しているところを見ると、光車建設のひとびとの物語ではないか、とか。しかし現物はまったくちがうものでありました。そもそも私は光車を「こうしゃ」と読んでいたのに、「ひかりぐるま」だったし。
 はじめからスリル全開で読ませるし、面白い。でも好きな話ではないなあ。サスペンスでおしまくるストーリーは好みでないし、ひとが死にすぎると思う。輪切りにしたニンジンが「にじ色にきらめいて、曼陀羅の光の輪のよう」に見える、とか、大家さんの電話のふしぎなカタチとか、ディテールに面白いところはいくらもあるのですがね。