怪物ベンサム 快楽主義者の予言した社会

 ベンサムについてはほとんど名を知るだけであつたが(だからなぜこの本を讀む氣になつたのか自分でもよくわからぬ)、おもしろかつた。18世紀イギリスについても無知だつたので出てくる人物の聯關を見るだけでたのしい。アダム・スミス、ヒューム、ミル、プリーストリー。ウォルポールにベックフォード。ベンジャミン・フランクリンにミラボー伯。カリオストロにポチョムキンに大黒屋光太夫とくる。
 かうやつて歴史を輪切りにして語る方法はないのだらうか。岡田英弘の「世界史の誕生」の冒頭の部分、テムジンがチンギス・ハーンになつたときの世界を横斷して語るのには興奮したがほかでは見ない。年表とにらめつこするほかないのか。

怪物ベンサム 快楽主義者の予言した社会 (講談社学術文庫)

怪物ベンサム 快楽主義者の予言した社会 (講談社学術文庫)