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テンプリズム(8)
化石少女
探偵の推理で犯人が判明する。だが証據がない。そこで一計を案じ犯人を罠にかける。大捕り物のすゑにつかまつた人物はXXだつた、なんてのは蛇足であり好かぬ。小説にサスペンスをくはへる手法なのだらうが、本格ものならば推理のプロセスとトリックの意外さで盛りあげるべし。「証據があるのか」などと犯人がぬかしたら、そんなものはないとすずしい顔でこたへる探偵であつてほしいとつねづね思つてゐた。
この小説はさうしたレヴェルを超えてゐる。ただ探偵の推理だけがあり、答へあはせは存在しない。うつくしい推理があれば、眞實だの事實だのは閑却してかまはないのだ。これはすごい、と思つたのだが。