遠まわりする雛

 私は元來、いはゆる日常の謎ものを愛好してきたが、最近になつて熱もさめた。日常の謎ものにおける謎には深刻さや切實さがない。それだけに謎の魅力や、推理過程やトリックがよほどすぐれてゐないとつまらなくなる。それなら無理せず殺人をおこしたらいいのではないかと思ふやうになつた。
 「コナン」や「金田一少年」は行く先々でひとが死ぬなどと揶揄されながらも、勇氣をもつて殺人といふ不自然を受けいれ、樣式をまもつてゐるのだ。いやまあ、さすがに「コナン」や「金田一少年」よかミステリとして上等ですがね。

遠まわりする雛 (角川文庫)

遠まわりする雛 (角川文庫)