「日本仏教史 ―思想史としてのアプローチ―」(末木文美士)

 専門が仏教だけに「日本宗教史」は仏教をあつかう部分に精彩があり、ならばとこちらを読んでみる。新書とか文庫の通史には乱暴な明快さが必要だと思うのだけれど、それがない。通説というか、一般的なイメージ(たとえば鎌倉新仏教についての)を否定するが、それに代わる明快なイメージが示されない。一言では説明できないものであると言っているのはわかるがそれぢゃダメなのよ。いや、ダメではなかろうが、読物としてのおもしろさはない。けっきょく、橋本治さんの解説と終章だけがおもしろかった。