「日本美術の歴史」(辻惟雄)

 また通史。好きですね。オビにある『縄文からマンガ・アニメまで』という文句はちと誇大とおもわれる。まんがやアニメにはほんのわづかしかふれてないからである。個人的に期待していたのは、日本絵画の平面志向がまんがとどうつながってゆくのか、歴史的に解明することだったのですが。
 まづ思ったのは仏教の影響の大きさ。前半はほとんど仏教美術である。西洋の絵画や音楽だって、時代をさかのぼるにつれて宗教色が濃くなってゆくのだし、そう考えればべつにおかしくもないのだけれど、日本人は非宗教的であるというイメージが私には強くあるためか。
 そしてそれが劇的にかわるのが、江戸時代。近代大衆文化を完全に先取りしている。徳川300年をどう評価したものかよくわからないのだけれど、もしかすると家康はえらかったのか。
 教科書としても使えて、しかも読んでおもしろいものを、というのが目標だったそうだが、教科書よりの印象ですな。通史としてなら、個々の作品についての文章をへらしたほうがよかろうし、でも読んでいて作品の図が出てないのがしばしば不満におもえるしで、なかなかむつかしい。
 あと気になったのが、なんで金地の絵ばかりなのかってこと。金地なだけでなんかイヤなんですが。