「魔術王事件」(二階堂黎人)

 いくつかの点でがっかりさせられる作品でありました。
 まず、シリーズ前作につづいて怪人趣味が前面にだされていること。前作だけでなく、蘭子ものの近作における犯人の造形はひどくつまらない。京極作品にもそういう感じのがありますが、探偵のライヴァル的悪役なんぞ、ミステリにはいらないのです。この対決の構図が次作にもつづくと思うとげんなり。
 さらに困るのは、犯人がわかってしまうこと。それもかなり序盤でわかります。不可能状況がはなはだしくてそれ以外の解答があるとは思えなくなってしまうのです。
 密室ものでは、密室殺人である必然性がないような作品もすくなくない。私はそれはかまわないので、密室のための密室でもいいのです。でも、この作品の消える部屋とか宝石強奪とかは、いくらなんでもひどいだろう。警察だって被害者の思いちがいとしてかたづけてしまっているし、まるっきり何の意味もない。これまた難点。
 あと、トランプは1から13までの数字があり、つまり奇数のが多いのですよ。