「増加博士と目減卿」(二階堂黎人)

 私が読んだ限りでは、メタフィクションというのは面白くない。いや、ひとをニヤリとさせられるくらいはできますが、それ以上に面白くならないと申しましょうか。「ドン・キホーテ」だってメタフィクションと言えなくもないし、メタフィクションの歴史は小説の歴史と同じくらいあるわけなのに、このていたらくはどういうわけか。いまだ人類がメタフィクションの料理のしかたをしらないのか、それともメタフィクションとはそもそもこれくらいのモノでしかないのか。
 「「Y」の悲劇」、ふざけすぎとの評が多かったそうだが、これは面白い。メタミステリもうまく使っていると思います。驚倒すべき兇器。
 「最高にして最良の密室」、これはメタにする理由がわからない。不可能状況はたいしたものだが、トリック自体は面白みがない。
 「雷鳴のとどろく塔の秘密」、これもメタに負けている(へんな表現)。ふたりの探偵の対決もぱっとしないし、エジプトネタもどこが面白いのかわからない。塔をめぐる謎はカーの何かの作品(「連続殺人事件」か?)に似てますね。トリックはクリスティやスラデックで読んだものに近いけど。