「アラビアン・ナイト(9)」

 着々と九巻。だが、この巻はあまり面白くない。やはり長篇が面白いようです。
 黒檀の馬の物語。有名な話らしいが知らなかったし、さほどファンタスティックな話でもない。北村薫さんの「空飛ぶ馬」に出てきた話はこれではないよね?
 ウンス・ル・ウジュードとアル・ワルド・フィール・アクマームとの物語。「君の名は」的すれちがいストーリー。これもたいしたことはないが、脇役がみな昔の恋を思いだして主人公たちに協力するのが楽しい。
 あとは警察長官の話や、獣姦の話や、詩人アブー・ヌワースの話などが並ぶ。アブー・ヌワースは詩人というよりも宮廷の道化のような感じで面白い。カリフの「アッラーがそちを誅殺なされますように」というセリフがいい。
 ところでこの翻訳(東洋文庫の前嶋訳ですが)で困ることがふたつあって、ひとつは詩文の訳であります。むりやり七五調にしたり、脚韻をふもうとしてへんな文になっている。そしてもうひとつが訳註をなぜか五十音順にならべていること。索引風にしてあってかえって検索しにくいのだけど、ふつうは語の登場順にしておきましょう? なんでこんなことしたのかな。