「フォン・ノイマンの生涯」(ノーマン・マクレイ)

 とにかくフォン・ノイマンは小気味いいほど頭がよく、読んでいて面白い。ノイマンを全肯定するのはともかく、他の科学者をおとしめる書きかたには首肯しかねる部分もあるし、アタマがいいのはわかるが相当にキナくさいひとなのも確かですね。とはいえエキセントリックな部分はなくて常識的な人物であるのが印象的でありました。
 訳文には疑問がある。固有名詞の表記に一般に流通していないものをつかうのはどうか。ジャカールをジャカードとするのはまだしも、エルヴィン・シュレディンガーの名ををアーウィンとやっちゃうのはどうなのか。さらにあらずもがなの訳註も多い。『タイタニック号のような沈みそうもない(訳注:といいながら一九一二年の処女航海で氷山に激突して沈んでしまう)豪華船』なんて註を書く人間の知性を信用できましょうか?