「バンド・ワゴン」(ヴィンセント・ミネリ)

 んでこっちも観てしまった私はあほだ。「雨に唄えば」のシド・チャリシーがすばらしくてもっと観たくなったのである。脇をかためるジャック・ブキャナン、オスカー・レヴァント、ナネット・ファブレイがいいが、今回はとりわけブキャナンに感じ入った。「ダンシング・イン・ザ・ダーク」(スプリングスティーンぢゃないよ)をはじめとしてチャリシーの踊りはきわめて美しい。美しいといえば、本人役でカメオ出演しているエヴァ・ガードナーも美しかった。「雨に唄えば」もこちらもバックステージもので、ミュージカル映画には奇妙なほど自己言及的な作品が多い。この作品だと、踊りや歌のシーンの半分は劇中劇「バンドワゴン」の演物なのであり、いわばメタフィクションなんですね。