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キマイラの新しい城
冒頭の「ふたりのマイクル」への獻辭をみて、(なぜか)すかさずひとりをムアコックと感得した。もう一方はイネスだか何だかわからぬ。ともあれさういふ次第で「パン・タン」はエルリック、「ルーンスタッフ」はホークムーン由來とわかる。「トキオーンを求めて」は「タネローンを求めて」なのも「嵐を呼ぶ剣」が「ストームブリンガー」なのも卷末をみるまでもなく悟つた。だがそれでは「幻獣の塔」とは何だらう。これも書名でないとをかしい氣がするが。コルムものも三册のみリストアップされてるのも不審だ。
ふりかへるとミステリとしてはけつこう弱い。しかし讀んでゐるときにはまつたく氣にならなかつた。このシリーズのつづきが讀めないのはつくづく無念である。
そしてこの作品がすきなのは、妙な人物がカーを愛好してをり、妙な人物がヴォネガットを引用し、妙な人物が「アーサー王の死」や「ロランの歌」にあこがれてゐるところなのだ。あと探偵がトマスを云々するところ。