暴雪圏

 「街」のやうな話になるのかと思つた。だが登場人物たちの複雜な事情がからみあつたりすることはなく、たんにペンションにあつまるだけであつた。暴雪にみまはれた街の話になるのかと思つたら、吹雪でペンションにとぢこめられた人びとの物語だつたのだ。それにしてはこの吹雪、オーヴァスペックではないのか。
 そもそもどうしてこの小説は讀みづらいのか。いや、實際にはすらすら讀めるのだが、どうものど越しがわるいていひますかね、考へて得た結論はユーモアの缺如である。現象的には人物におもしろみがない。魅力がない。惡黨には惡黨なりの魅力があつてはじめて小説は讀めるシロモノになるのではあるまいか。
 ま、ラストあたりはサスペンスを感じなくもなかつたけれど。

暴雪圏

暴雪圏