王様の仕立て屋〜サルト・フィニート〜(25)〜(27)

 やうやく最新刊に追ひついたところでこの作品の勘所を申しあげると、主人公が東京辯をしやべることなのである。正確には主人公はおもにイタリアにをり、話すあひてもイタリア人が多く、イタリア語を話してゐるはずなのであり、つまりはそれが東京辯に翻譯されてをるわけだ。主人公どころかほかの登場人物が話すこともままあつて、それがヘタな關東落語を聽くよりもここちよいのである。