スティーヴ・ホッケンスミス「荒野のホームズ」

 ホームズにあこがれたカウボーイが殺人事件の搜査にいどむ。
 おもしろいのは、この小説の世界がホームズ譚の世界とおなじであることだ。といつて、レストレイドが登場したりするわけではないが、ホームズは実在の人物としてあつかはれる。
 もつとも、ホームズは二年前にライヘンバッハの瀧におちたところらしいのだが、モンタナにそんなニュースはつたはつてこないのですね。
 ミステリとしては平凡ながら、探偵の物語にはちやんとなつてる。
 しかし私の印象にもつとものこつたのは、カウボーイの生活の苛酷さ、不潔さ、野蠻さなのである。あんな野卑な世界にうまれなくてよかつた。

荒野のホームズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1814)

荒野のホームズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1814)