「数学的にありえない(下)」(アダム・ファウアー)

 “ラプラスの魔”という表記のほうが“ラプラスの悪魔”よりずっと多いと、グーグルで検索してみてわかった。でも、マックスウェルのほうは悪魔のが多いのだ。どっちも悪魔にしたほうが平仄があうというか、つりあいがとれるというものではないですか?
 それはともかく、“巻き戻し”というのは単に計算のしなおしにすぎなかった。さて、ラプラスの悪魔(と意地になって表記する)が現実化するためには、不確定性原理を無視するにしても完全な情報知覚と強力無比な演算能力を必要とする。なにかで読んだところでは、宇宙のすべての粒子のうごきをシミュレートするには最小でも宇宙とおなじ大きさのコンピュータがいるということだし。そのへんのすべてを集合無意識でかたづけてしまうのは乱暴すぎるよねえ。非アリストテレス論理とどっちが無茶でしょうかね。それに、どれだけの強さでコインをはじけば表が出るとわかることと、実際にその強さではじけることはまるで別のことではなかろうか。
 そのへんを度外視すれば、ふつうに読めるサスペンスというところか。