「ぼくと1ルピーの神様」(ヴィカス・スワラップ)

 原題の「Q and A」もつまらないが、訳題はひどい。そもそもこの小説の結論に反しているのではないか。ま、それを措くとして、これはつまり『登場人物がおはなしをする(そして別の登場人物がそれを聞く)話』である。だが「アラビアン・ナイト」はもちろん、「ムントゥリャサ通りで」の魅力の十分の一もない。聞き手の出番がすくなすぎるんぢゃないだろうか。作者は外交官で、そのせいかあらぬか、社会問題を描きだそうとする野心がほの見えて、そのぶん物語のおもしろさを追求することを怠っている感じ。ただ、時系列順に語られない物語がヘンに魅惑的ではある。「ニーリマ・クマーリとはいったい誰なのか?」などと想像をたくましうするというものだ。