「近松物語」(溝口健二)

 原作のちがいなのか何なのか、ストーリーがしっかりしていておもしろい。もっとも、90分ほどで物語は詰んでしまい、あとはグダグダやってるだけであった。主人公がただ流されるだけなのもどうも。
 だがしかし、そんなことよりも女が間男をつくって逃げたくらいのことで官憲がうごくのにおどろいた。なんてヒマなのだろう。そして、妻が不義密通したことを所司代にとどけなかっただけで、店をとりつぶし追放する苛酷さにあっけにとられた。息子が父親をたよって逃げてきても、村人にまでおとがめがあるためにかくまうことすらできない。なんてイヤな社会なんだ。