「聖域の殺戮」(二階堂黎人)

 SFミステリ、なのだがSFの部分がなんとも古めかしい。いにしえのスペースオペラみたいな感じであります。ちりばめられた「バルスーム」「ヴォークト」「陽電子頭脳」なんてコトバよりもさらに古い。けれどこれはたぶん、作者の意図どおりなのであろう。考えてみれば二階堂さんのミステリだって古めかしいといえばいえるわけで。
 不可解な殺人、密室状況、さらにはある惑星の社会そのものの秘密、と謎自体は魅力的である。また“怪物”に襲われる危機もあってサスペンスは上々。だが真相はぱっとしない。ああ、こんなものか、という印象ですな。だが、ミャルル少佐がかわいいので全部ゆるそうぢゃないか。蘭子の250倍は魅力的ですよ。