「経度への挑戦 一秒にかけた四百年」(デーヴァ・ソベル)

 六分儀の発明に関する本かと思っていたら、正確な時計の発明者ジョン・ハリソンの話であった。いかにテキトーに本を買っているかってことですな。
 経度測定の物語はオールスターキャストである。ガリレオ、カッシーニニュートンオイラー。経度のためにグリニッジ天文台が建設されることになると、設計はクリストファー・レンが行うし、作業の監督にはロバート・フックが登場する次第。ハリソンを支持したエドモンド・ハレーは、さすが困ったひとニュートンの面倒をみただけあって度量の広い立派な人物であった。
 ハリソン自身はといえば、誠実で頑固な、いかにも職人というひとであった。独学で時計づくりをまなんだ彼が、独創的な発想をつぎつぎとしていくのは壮観である。が、ここでも愚行が歴史を支配する。彼の時計は40年も正当な評価をうけず、その間航海は危険なままであった。まあ、天文学的・科学的に解決しようとしていたひとが、技術的・工学的な解決をうけいれたくない気持ちはわかるような気もしますが。
 本文にもあったが、ハリソンの時計の変遷にはほんとうに心を動かされる。第一号から四号の時計の写真が載っているのだが、三号までの時計が優美なカタチとはいえ計時器とでも呼ぶべきシロモノであるのに、四号にいたって時計としかいいようのないフォルムを得るのである。これにはしびれました。ロンドンにいって見てみたくなりましたね。
 あと、共感の粉のアイディアはすばらしいぢゃないですか。なぜだかEPR相関をおもいだした。