「バベルの謎 ヤハウィストの冒険」(長谷川三千子)

 旧約聖書の創世記のJ資料の部分だけを抜き出し、作者の意図をかんがえるというもの。深読みがすぎるというか、妄想をたくましくしすぎるというか、とうてい首肯しがたい考えも多いのだが、とにかく読み物としてスリリングで面白い。
 ただ、この読み直しも創世記の不条理な面白さにまさっているかといえばそうでもない。そう考えると、ふたつの資料をむりやり切り貼りしてしまった編輯者こそ、J資料やP資料の作者よりも謎なのではないか?