アラビアン・ナイト(16)
 むかしの小説に出てくる女性がよく氣絶するのは、コルセットでしめつけてゐるために血行がわるいからだなんて説をどこかで讀んだ。だが、アラビアン・ナイトでは男もしばしば氣絶する(そしてバラ水をかけられて蘇生する)。氣絶といふ語の定義がまるでちがふのではないかと思ふほど。
 ハサンはろくでなしなのに、彼をたすける魔族(?)たちのなんと心優しいことか。
 ほかふたつの話の出來も上々で、かなり水準のたかい卷となつた。

 

アラビアン・ナイト〈16〉 (東洋文庫)

アラビアン・ナイト〈16〉 (東洋文庫)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1989/05/01
  • メディア: 単行本
 

 
妖鳥
 いやあ、おもしろい。いはゆる新本格ミステリのやうな突飛な道具立てはないのに、はるかに異樣で惡夢じみた事件が展開する。終盤にいたるまで事件がそもそもどんな事件なのかすら判然としない。動機はなんだそれはといふやうなものだけれど、謎の異樣さだけで滿足してしまつた。
 あと、ツイスト利かせすぎ問題もあるといへばあるか。

 

妖鳥(ハルピュイア) (幻冬舎ノベルス―幻冬舎推理叢書)

妖鳥(ハルピュイア) (幻冬舎ノベルス―幻冬舎推理叢書)