名探偵の掟

 低調なコメディ。
 そもそもお約束をからかふなんて野暮なことだ。プロレスでロープにふられた選手がもどってきたり、ミュージカルで登場人物が突如としてうたひだすのを嗤ふのは無教養なガキがすることと相場が決まつてをる。
 では樣式美をわきまへつつも、そこから洗煉された手法でをかしみを導くにはどうしたよいかといふと、よくわからない。ただトリックを非パロディ作品でも通用するだけのものにしてほしくはあつた(さういふのもあつたけど全部ではない)。ミステリのパロディはミステリとして成立してゐる必要がある、とかいふ意味のことを、「神野推理氏」のあとがきか何かで小林信彦も述べてゐたはずだ。

名探偵の掟 (講談社文庫)

名探偵の掟 (講談社文庫)